気管(ヒト)〈横断 膜性壁〉

A 多列線毛上皮
B 気管腺(混合腺)
C 弾性縦束
D  気管筋(平滑筋)

矢状断 sagittal section (前後軸での断面)標本(43)の気管壁は馬蹄形の気管軟骨 tracheal cartilage が前壁にはみられるが、後壁にはない。気管上皮は多列線毛上皮である。前壁をみると、上皮に密接して比較的厚い基底膜、lymphocytesやplasma cellsの多い粘膜固有層、縦走する弾性線維束(弾性縦束 a bundle of elastic fibers)、 気管線 tracheal glands (混合線)の分布する粘膜下組織、そして気管軟骨tracheal cartilage の順に位置する。気管軟骨は軟骨膜 perichondrium に包まれ、軟骨と軟骨の間には緻密でエオジン好性の結合組織(輪状靱帯 annular ligament )がある。後壁(膜性壁)も上皮から固有層までは前壁と代わらないが、弾性縦束に多くの平滑筋を含むので、一見、腸管の粘膜筋板のように見える。粘膜下組織には気管腺が多く見られ、これらの腺は横断された平滑筋束(tracheal muscle )と混在している。この外側に縦走する平滑筋も見られ、外膜 adventitia で食道の外膜と融合している。  気管軟骨を含む前半部の横断標本(44)でも組織学的には上述の標本と代わらないが、ここでは気管腺の導管が上皮に開口しているところが見られると思う。また、腺の領域にラッセル小体を含む plasma cellsが少数個みられる。弾性縦束の横断腺維が比較的密に点配列しているのもみえる(エオジンでピンク色に見える)。  標本17は横断された気管の後半部であるので標本43と対比して理解しておくこと。

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