歯芽発生(ヒト胎児下顎)
A 歯乳頭
B 象牙芽細胞
C 象牙前質
D 象牙質
E エナメル質
F エナメル芽細胞(内エナメル上皮)
G エナメル髄(星状網工)
H 外エナメル上皮
I 間葉
胎生期(6週)に歯列の予定域にある外胚葉性の口腔上皮(重層扁平上皮)が増殖しつつ歯堤(or稜)dental
lamina と呼ばれる細胞塊となって内部に入り込んで行く。その当初は先端が蕾のようにふくらんでいるが、やがてその先端部領域にある緻密な間葉組織性の細胞集魂を包むように先端がへこみ釣鐘のような形態となる。この釣鐘様形態の組織はエナメル器
enamel organ と呼ばれ、これによって上方から被われた細胞集塊が歯乳頭dental
papilla である。エナメル器と歯乳頭は一諸に歯嚢 dental follicle と呼ばれる結合組織鞘
connective tissue sheath に包まれ、また歯堤との結合を失って独立した歯胚
tooth germ となる。この時期の enamel organ は単層の内外両エナメル上皮 inner
and outer enamel epithelia および両上皮間質を含むエナメル髄 enamel pulp
からなる。内エナメル上皮は高円柱形のエナメル芽細胞ameloblastsに分化してエナメル質の形成に与る。一方、内エナメル上皮に接する歯乳頭の間葉細胞は1列に配列した円柱形の象牙芽細胞
odontoblasts に分化して象牙質dentin を作る。つまり、amelobasts は odontoblasts
側へ向けて enamel をつくるので結果的には odontoblasts 側を底として上方に
向かってエナメル小柱 enamel rods は伸長する。また、同時に odontoblasts
は ameloblasts 側に向けてdentinをつくるのでenamelとdentinの形成が進むに連れて
ameloblasts と odontoblasts との間隔は両物質によって拡大して行くことになる.歯嚢の間葉細胞
mesenchymal cellsはfibroblasts となり、この1部はセメント芽細胞 cementoblasts
に分化して dentin の外表面に cementum をつくり、残りのfibroblastsは歯根と歯槽突起の間に歯根膜
periodontium を形成する。
HE染色(各論9)した歯胚 tooth germ では初期に形成されたエナメル質は濃赤紫色に、新生のエナメル質(外表面にある)は濃赤色に染まる。また、初期に形成された象牙質dentinは濃紫色に、新生のdentin(前象牙質predentin)は淡いオレンジ色で
odontoblasts に接してみえる。強拡大でエナメル質を観察すると縦断された細い棒状のエナメル小柱やその角ばった横断面を見ることができる。Predentin
と dentin のところでは象牙細管 dentinal tubules やその中に歯線維dentinal
fiber(or Tome’s fiber or process)もみることができる。歯胚を包むように骨(本標本ではmandible)との間に歯嚢(fibroblastsとcollagen
fibrills)がある。