膵臓(ヒト)

A ランゲルハンス島(内分泌部)
B 小葉(外分泌部)
C 結合組織性中隔
D 小葉間導管

膵臓 pancreas の組織学的基本構造は外分泌部 exocrine portion と内分泌部 endocrine portion かなる。外分泌部は膵液を分泌する細胞からなる終末部(腺房 acinus)とこの分泌物を運ぶ導管 duct とからなる。終末部に続く導管を介在部 intercalated portion (or duct) といい、これらの介在部が集まって太くなり、小葉内導管 intralobular duct となり,さらに小葉内導管が集まってさらに太い小葉間導管 interlobular duct となる。これらの小葉間導管が集まって膵管 pancreatic duct(主膵管と副膵管)となって十二指腸に開口する。  

ヒト膵臓(ホルマリン固定、H-E)膵組織標本を低倍率(弱拡大)の顕微鏡下で観察すると、膵組織は相対的に多くの膠原線維を含む結合組織(時々脂肪組織も含む)によって幾つもの区画に分けられている。各区画が膵小葉で小葉と小葉の間の結合組織を小葉間結合組織といい、そこには単層円柱上皮からなる小葉間導管や血管(動脈と静脈)がみられる。この小葉間結合組織より内部に続く結合組織の中にも比較的細い導管があるが、これは小葉内導管である。小葉内の結合組織内にも相対的に細い血管が分布する。一般に導管や血管などの周囲に結合組織が多いので小葉内でもそれらを容易に見い出すことができる。小葉内には卵形、楕円形など種々の形をした細胞集団(10個前後、或いはそれ以上の細胞よりなる)が少量の結合組織によって囲まれて多数見られる。これらが外分泌腺の終末部で腺房(acinus)という。腺房を構成する膵外分泌細胞は腺房細胞acinar cells と呼ばれ、それらの細胞質内にはエオジンで赤染した多数の分泌顆粒が存在する。これらの分泌顆粒は云うまでもなく膵酵素を含む。時々、終末部に続いて分泌顆粒を含まない相対的に明調な細胞が2列に並んでいることがある。これは介在導管 intercalated duct で小葉内導管に続く起始部にあたる。1つの腺房には必ず1本の介在導管が続いているものであるが、切片のためにそれが観察できたり、できなかったりするに過ぎない。このことを念頭において標本のここかしこを観察すると、介在導管と小葉内導管が続いている箇所を見い出だすことができる。また、終末部(腺房)のほぼ中央に1〜2個、或いは2〜3個の細胞が存在するのもしばしば観察されるが、この細胞の細胞質は非常に少なく、時々核のみしかみえないこともある。この細胞を腺房中心細胞centroacinar cellといい、介在導管の細胞に続くものである。さらに小葉内には腺房細胞よりはエオジンに対して染色性が弱く、細胞質がピンク色で、しかも腺房細胞の核より幾分小さな円形核(一般にヘマトキシリンで濃染している)をもつ細胞集団がみられる。これはランゲルハンス島(Islets of Langerhans) 或いは膵島 (Pancreatic islets) で、1つの小葉内に1〜数個みられることが多い。1つの膵島が1つの腺房よりも何十倍も大きいこともある。膵島を構成する細胞は勿論内分泌細胞で膵島細胞 pancreatic islet cellsと呼ばれ、標本を強拡大で観察すると、細胞質内に多数の顆粒(外分泌細胞の顆粒より相当に小さく、ややピンク色にみえる)がみられる。しかし、本標本で4種類の膵島細胞を識別することはできない(実習中に他の標本で膵島細胞の実例を示す)。腺房と膵島の境界が不明であることが多いが、これは膵島の周囲にヒトでは結合組織が少ないためである。本標本の外側部にみられる脂肪組織の中にリンパ小節も存在する。

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