当教室のメインテーマであるアクアポリンの研究について紹介します。
細胞を取り囲む細胞膜は脂質で形成され、つまり、油の膜で覆われているようなものですから水の通過は制限されています。しかし、生体内には水を多く扱う細胞がたくさんあります。一つは腎臓の細胞です。腎臓は簡単に言うと血液中の老廃物を除去し、血液の状態、すなわち体内の状態を一定に保つはたらきをしています。老廃物の除去の仕組みとしては、腎臓内の糸球体でまず大まかに濾過して原尿として必要なものも捨ててしまいます。原尿には糖をはじめとして、水も大量に含まれ、原尿のまま捨ててしまうと1日に200リットルもの水が失われてしまいます。もちろん人の身体はそんな無駄なことはしていません。水や糖など必要なものは再び回収する機構が存在します。糸球体に続く長い管である尿細管とそれに続く集合管で再吸収しているのです。尿細管も集合管も細胞で囲まれた管です。したがってこの細胞を通して水を体内に戻すことになります。これが再吸収です。水の通り道として、細胞と細胞の隙間(細胞間隙)を通る経路もありますが、尿細管や集合管では水に対してはこの経路ははたらきません。細胞を直接通過する、すなわち細胞膜を大量の水が通過する必要があります。先に述べました、油の膜である細胞膜は水の通過が制限されていて、尿細管と集合管での水の再吸収にはとても間に合いません。そこで細胞膜に水が通るチャネルを作っています。この水チャネルのタンパク質がアクアポリンです。アクアポリンの仲間は植物や細菌・寄生虫からヒトまで、生物全般にみられる水チャネルです。ヒトをはじめとするほ乳類では13種類の少しずつ性質の異なるアイソフォームが存在します。その中で、現在アクアポリン2、アクアポリン11、アクアポリン5を中心に研究を進めています。